マンションの資産価値や住環境を維持するために欠かせない大規模修繕。その工事を巡り、管理組合が注意したい問題が明らかになっています。
関東のマンション大規模修繕工事では、施工会社間の受注調整に加え、本来は管理組合を支える立場である設計コンサルタントが関与していたとされる問題が表面化しました。
さらに、施工会社の関係者が住人になりすましたり、実際に住戸を取得したりして管理組合の意思決定に入り込み、自社に有利な工事へ誘導しようとするケースも報じられています。
大規模修繕はマンション所有者全員のお金に関わる問題です。では、管理組合や区分所有者はどのような点に注意すればよいのでしょうか。(国土交通省「マンション管理」)
国も以前から「利益相反」に注意喚起
大規模修繕を巡る利益相反は、以前から問題視されてきました。
国土交通省は2018年、大規模修繕工事944事例を調査し、工事金額などのデータを公表しました。その背景には、設計コンサルタントがバックマージンを支払う施工会社を受注させるため、不適切な働きかけを行うといった利益相反への懸念がありました。(国土交通省「マンション大規模修繕工事に関する実態調査を初めて実施」)
大切なのは、「コンサルタントに任せたから安心」「管理会社が紹介した会社だから大丈夫」と考えるのではなく、選定の経緯や見積内容を管理組合自身が確認できる状態にしておくことです。
見積価格は「比較できる状態」にする
大規模修繕では金額が大きくなるため、見積書を受け取っても、それが妥当なのか区分所有者だけで判断するのは簡単ではありません。
そこで重要になるのが、複数の提案や見積もりを比較し、工事項目や仕様、数量、単価などを確認することです。
参考になる取り組みも始まっています。横浜市は2026年1月から、市内マンション向けに民間事業者が開発した「大規模修繕工事費用シミュレーター」を紹介しています。見積書をアップロードすると、エリアやマンションの規模などを踏まえて費用相場との差を確認できる仕組みで、無料で利用できます。(横浜市「大規模修繕工事の見積書を査定し、金額の妥当性を判断したい」)
こうしたサービスが利用できない地域でも、複数社から同じ条件で提案を受けたり、利害関係のない専門家へ相談したりすることで、判断材料を増やすことはできます。
修繕積立金が不足するマンションは36.6%
不適切な工事費を防ぐことが重要なのは、修繕積立金に余裕があるマンションばかりではないためです。
国土交通省の「令和5年度マンション総合調査」では、長期修繕計画上の予定積立残高に対して、現在の修繕積立金が不足しているマンションは36.6%でした。(国土交通省「令和5年度マンション総合調査結果」)
修繕積立金は、屋上防水や外壁、給排水設備など、建物を長期間維持していくための大切な資金です。
予定以上に高額な工事を発注してしまえば、その後の修繕計画や積立金にも影響する可能性があります。だからこそ、「工事が必要か」だけでなく、「その内容と金額が妥当なのか」という視点が欠かせません。
大規模修繕はマンションを売るときにも無関係ではない
大規模修繕や修繕積立金は、これからも住み続ける人だけの問題ではありません。
マンションを売却するときには、築年数や室内の状態だけでなく、長期修繕計画、修繕積立金の状況、大規模修繕の実施状況など、建物全体の管理状態も重要な情報になります。
そのため区分所有者としては、総会資料を読まずに捨ててしまうのではなく、「修繕積立金はいくらあるのか」「次回の大規模修繕はいつなのか」「工事会社をどのように選んでいるのか」などを確認しておくことをおすすめします。
管理組合の運営に関心を持つことは、結果として自分の住まいや資産を守ることにもつながります。
「任せきり」にせず情報を持つことが第一歩
大規模修繕の専門知識を、すべての区分所有者が身につける必要はありません。
ただし、高額な工事だからこそ、特定の会社や人物だけに判断を任せず、選定過程を透明にすることは重要です。不自然に特定業者を推す人物がいないか、複数の提案を比較しているか、見積内容について十分な説明があるかなどを確認してみましょう。
また、所有するマンションの管理状態や修繕計画が気になったときは、現在の市場で自分の住戸がどのように評価されるのかを査定で確認する方法もあります。
査定は売却を決めてから利用するものとは限りません。大規模修繕を控えているタイミングなどに、今後も保有するのか、売却するのかを考えるための一つの判断材料として、現在の資産価値を把握しておくのもよいでしょう。
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