都市部の住宅価格が高騰し、子育て世帯でさえマイホームを諦めはじめています。この状況が、すでに不動産を持っている方にとって何を意味するのか。データをもとに整理してみます。
賃貸に住む人の約半数が「買いたいけれど、買えない」
日本経済新聞社が 20〜50 代を対象に行ったアンケートでは、賃貸住まいの人のうち「家を買いたいが困難」と答えた割合は 48.7%にのぼりました。その理由としてもっとも多かったのが「住宅価格の高騰」(53.2%)。子育て世帯に絞ると、この数字はさらに 61.9%まで上がります。
LIFULL HOME’S のデータによると、2025 年 12 月の首都圏ファミリー向き中古マンションの掲載価格は前年比 41.8%増の約 6,012 万円。東京 23 区に限れば 1 億円を超える水準です。中古ですらこの価格帯では、共働きで年収 1,000 万円近い世帯でも手が届きにくいのが実情です。
購入困難と感じる賃貸層
48.7%
賃貸住まい全体
子育て世帯に絞ると
61.9%
「価格高騰」が理由
児童のいる世帯の平均収入
820万円
厚労省 2023 年調査
高騰の波は都市部の周辺へも広がっている
価格の上昇は都心だけの話ではありません。都市部で住宅を買えなかった層が、より生活コストの低いエリアに目を向ける「郊外化」が起きています。2025 年の人口移動データでは、35 歳以上のファミリー層が都心周辺エリアへ転出する傾向が鮮明になっています。
その結果、これまで比較的手頃だった地域にも購入需要が流入し、地価・賃料ともに上昇するケースが増えています。2025 年の基準地価は全国平均で 4 年連続の上昇、地方の政令市(札幌・仙台・広島・福岡)でも上昇幅が 4.1%に達しています。
注目のデータ:「多極集住」の進行
国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、今後は東京一極集中を超えるペースで、各道府県の県庁所在地などの中心都市への人口集中が進む見通しです。つまり「地元の中心部」の不動産需要は、周辺部と比べて相対的に底堅くなる可能性があります。
「買えない人たち」が賃貸市場に流れこむ構造
購入を断念した層は、賃貸市場に留まります。これが賃貸需要を押し上げ、家賃の上昇につながっています。東京 23 区や大阪市では 2024〜2025 年にかけて賃料が顕著に高騰しており、固定資産税の評価替えも追い風となってオーナーによる値上げが進んでいます。
賃貸物件を所有している方にとっては、稼働率と賃料水準の両面で有利な環境が続いていると言えます。一方で、管理コストや修繕費の上昇も同時に進行しているため、利益構造の再点検は欠かせません。
それでも、先行きには注意が必要な理由
現在の高騰は需要と低金利が重なった結果ですが、今後は状況が変わりうる要素がいくつか重なっています。
- 1金利の上昇:日銀は 2024 年以降、段階的に利上げを進めています。政策金利は 0.5%(2025 年 6 月時点)。買い手の資金調達コストが上がれば、価格の頭打ちにつながります。
- 2空き家の加速:2023 年時点の全国空き家数は 900 万戸超、空き家率は 13.8%と過去最高。団塊世代の高齢化で相続物件がさらに増える見通しです。野村総研は 2043 年に空き家率が 25%を超えると予測しています。
- 3エリア間の格差拡大:都市部・駅近・好立地の不動産は値を保ちやすい一方、人口減少が進む郊外・過疎エリアでは下落が続くとされています。「不動産全体が上がる時代」から「選ばれる場所だけが上がる時代」へと変わりつつあります。
見落としがちなポイント
世帯数は 2030 年をピークに減少に転じると予測されています(国立社会保障・人口問題研究所)。住宅の需要自体が長期的に縮小するこの流れは、どのエリアの不動産にも影響を与えます。価格が高い「今」の状況が、10 年後も続くとは限りません。
不動産所有者が今、考えておきたいこと
住宅価格がこれだけ上昇した今、所有している不動産の価値を改めて把握しておくことは、とても自然な行動です。特に「今後もその物件を持ち続けるのが最善か」という問いは、市場が好調なときほど冷静に考えやすいタイミングでもあります。
売却を検討する場合には、以下のような視点が参考になります。
- 1その物件は「選ばれ続けるエリア」にあるか——駅近・都市中心部・子育て環境の整ったエリアかどうかを確認する。
- 2空き家率・人口動態の将来予測を調べる——地域の 10〜20 年後の需要をイメージする。
- 3管理コストと収益のバランスを再計算する——修繕費・税負担の増加を踏まえた実質利回りを確認する。
- 4複数の査定を取り、今の市場価値を把握する——感覚ではなく、データで現在地を確認することが出発点。
売ると決めなくても、まず「今いくらで売れるか」を知っておくだけで、今後の判断がずっとしやすくなります。不動産市場が良い状態にある今だからこそ、選択肢を広げておくことに価値があるかもしれません。
本記事は公開情報をもとにした考察であり、個別の投資・売却を推奨するものではありません。