建て替えの条件が緩和されても解決しない問題
2026年4月の法改正により、マンションの建て替え決議は原則5分の4の賛成が必要なままですが、耐震性不足など一定の条件を満たす場合は4分の3の賛成で可能となりました。これにより、合意形成のハードルはやや下がります。
ただし、課題として残るのが資金面です。近年は容積率の余裕が少ない建物が増え、建て替えによる戸数増加や余剰床販売が難しくなっています。その結果、区分所有者の自己負担は大きくなり、建て替え自体が成立しにくいケースが増えています。
さらに工事費の上昇や人手不足の影響もあり、所有者1人あたり数千万円の負担が必要になる試算もあります。法改正によって「決めやすくなる」一方で、「実行しにくい」状況はむしろ強まっているといえます。
建て替え以外の出口も選べるように
今回の法改正では、建て替え以外の選択肢も整備されました。主なものは次の3つです。
(1) 建物を残して改修する1棟リノベ
(2) 建物解体後の敷地売却
(3) 建物と敷地の一括売却
これらも一定条件で多数決により決定できるようになります。つまり、マンションは「建て替えるか維持するか」だけではなく、「最終的にどう終わらせるか」という視点が制度として明確になったということです。
ただし、どの方法でも資金の問題は避けられません。
(1) 改修なら工事費負担
(2) 売却なら解体費負担
いずれも区分所有者の負担が前提になります。
都心以外で起きやすい負担の増加
この問題は、特に再開発の収益性が高くないエリアで大きくなります。
建て替えが成立する典型例は
(1) 駅前立地
(2) 容積率に余裕
(3) 販売価格が高い
こうした条件がそろう場合です。
しかし住宅中心のエリアでは
(1) 戸数増加が難しい
(2) 販売単価が上がりにくい
(3) 事業者が参加しにくい
このような状況になりやすく、結果として区分所有者の自己負担が重くなります。つまり、同じ築年数でも立地によって将来の選択肢は大きく変わる可能性があります。
持ち続けるほど選択肢が減る可能性も
築年数が進むほど、次の問題が重なっていきます。
(1) 住民の高齢化
(2) 合意形成の難化
(3) 修繕費の増加
(4) 売却価格の低下
(5) 金融機関の融資縮小
こうなると、建て替えも売却も進まない「動かせない不動産」になる可能性があります。今回の法改正は、こうした事態を防ぐための制度整備ともいえますが、逆にいえば「早めに判断する重要性」が高まったとも考えられます。
これから予想される流れ
今後は次のような動きが増えると考えられます。
(1) 管理組合で出口議論が増える
(2) 解体費の積立を検討する例が増える
(3) 一括売却の検討が一般化する
(4) 築古マンションの売却相談増加
(5) 買主側の選別が厳しくなる
つまり、所有しているだけで価値が保たれる時代から、「将来の出口を前提に考える時代」へと変わっていく可能性があります。
売却という判断も選択肢の一つ
こうした状況の中では、将来の建て替えや解体負担が現実化する前に売却を検討するという考え方もあります。
特に次のような場合は検討余地があります。
(1) 築30年以上になっている
(2) 修繕積立金が不足気味
(3) 建て替え議論が出始めた
(4) 管理組合の参加率が低い
(5) 周辺で空室が増えている
もちろんすぐに売却する必要はありませんが、選択肢が多い段階で相場を把握しておくことは重要です。
将来の負担や合意形成の難しさを考えると、「動けるうちに検討する」という考え方は、これからより現実的になっていくかもしれません。
不動産売却王では、マンションの築年数や立地条件などをもとに、現在の市場価格の目安を簡単に確認できます。まだ売却を決めていない段階でも利用できるため、今後の判断材料として活用してみてはいかがでしょうか。