「自分に万一のことがあったら、自宅は誰に引き継いでほしいか」。そんな希望を形にする遺言にも、デジタル化が進んでいます。AIによる草案作成や公正証書遺言のリモート作成は、準備の負担を軽くする選択肢です。ただし、アプリに入力するだけで、有効な遺言が完成するわけではありません。
AIは財産と希望を整理する入口に
「AIユイゴンWell-B」は、AIとの対話などを通じて財産や家族への思いを整理し、遺言の草案を作成できるアプリです。ただし、草案自体に法的効力はなく、有効な遺言にするには法律で定められた方式に従う必要があります。
不動産がある場合は、「自宅を妻に残したい」といった希望とともに、登記事項証明書や固定資産税の課税明細書を準備すると、公証人などへの相談が進めやすくなります。共有名義なら自分の持分も確認し、AIがまとめた内容と資料を照合しましょう。
公正証書遺言はリモート作成も可能
2025年10月から、公正証書の作成手続きのデジタル化が始まりました。遺言者が希望し、公証人が相当と認めた場合には、ウェブ会議で公正証書遺言を作成できます。
誰でも無条件に利用できるわけではありません。本人確認や判断能力、本人の真意を適切に確認できるかなどを、公証人が判断します。また、証人2人が必要で、推定相続人などは証人になれません。
パソコンやカメラなどに加え、電子サイン用の機材も必要です。利用できる環境や必要書類は、早めに公証役場へ確認しましょう。費用は財産を受け取る人ごとの価額などで変わるため、リモート方式でも事前の見積もりが大切です。
新しい「保管証書遺言」は施行時期に注意
2026年6月に成立・公布された改正法では、電子データなどで作成した遺言を法務局で保管する「保管証書遺言」の創設が決まりました。
法務省によると、この制度に関する改正は、2026年6月24日の公布日から3年以内に政令で定める日に施行されます。すでに始まっている公正証書のデジタル化とは別の制度です。「スマホに文章を保存すれば遺言になる」と受け取らず、利用開始時期と正式な手続きを確認する必要があります。
自宅の相続では「誰に残すか」と「資金」を考える
不動産は預貯金のように分けにくい財産です。例えば、自宅を配偶者に残したい場合は、子どもに引き継ぐ預貯金なども含めて、財産全体の分け方を考えましょう。
また、遺言があっても、一定の相続人に保障される「遺留分」への配慮は欠かせません。遺留分を侵害すると金銭の支払いを求められる可能性があるため、自宅を受け取る人の資金面まで検討することが大切です。具体的な分け方は、弁護士などに相談しましょう。
家族を共有名義にすれば解決するとも限りません。将来の売却などで意見が分かれる可能性も踏まえ、住み続ける人や管理する人の希望を整理しておきたいところです。
遺言の準備は、まず所有不動産と家族の希望を把握することから始まります。不動産売却王の無料査定も、現在の価値を知る参考になります。ただし、売却価格の目安と相続税評価額は異なります。査定は判断材料の一つとし、法的な確認とあわせて、家族に合った引き継ぎ方を考えましょう。