街を歩いていると、昔から見慣れていた建物が、いつの間にか役目を終えていることがあります。
不定期連載「消えゆく風景」。これまで岡山市内の風景を取り上げてきましたが、今回は初めて倉敷市へ。
取り上げるのは、倉敷市新田、市役所の隣にあった倉敷市屋内水泳センターです。「温水プール」と聞くと、学生時代や家族で訪れたときのことを思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか。
1981年の開館から45年。長年親しまれてきた施設は、2026年3月31日に閉館しました。
私も学生の頃、何度か利用したことがあります。今回は、2026年10月21日に撮影した解体工事の写真とともに、その歩みを振り返ります。

[写真①:解体工事中の建物/2026年10月21日撮影]
県営プールとして始まった45年の歴史
倉敷市屋内水泳センターは、1981年(昭和56年)に岡山県の施設として開館しました。その後、2007年に倉敷市へ移管され、市の施設として営業を続けてきました。
館内には50メートルプールと25メートルプール、幼児プールがあり、年間を通じて泳げる施設でした。トレーニング室や研修室も備え、市民の健康づくりを支えてきた場所です。
また、50メートルプールは世界選手権やオリンピックの代表選考会の会場としても使われました。身近な温水プールであると同時に、競技の舞台としての歴史も持っていたのです。
閉館の理由は、建物や設備の老朽化
長く利用されてきた一方で、施設では老朽化が進んでいました。
市の説明によると、高温多湿な室内環境や水質管理に使う塩素の影響もあり、コンクリートの浮きや割れ、塗装の剥がれ、鉄骨のさびなどが見られるようになっていました。漏水や設備の故障に加え、大規模な雨漏りも発生し、補修を重ねながら運営していたそうです。
こうした状況を受け、2026年3月末での閉館が決まりました。
最終日の様子を伝える公式ブログには、利用者の思いをつづる寄せ書きスペースを何度も増設したことが紹介されています。そのエピソードからも、多くの人に親しまれてきたことが伝わってきます。

[写真②:別の角度から撮影した解体工事の様子/2026年10月21日撮影]
2026年10月、解体が進む現地へ
10月21日に訪れた現地では、建物の解体が進んでいました。
閉館したと聞くことと、実際に建物が取り壊されていく姿を見ることでは、受け止め方も違うものです。学生の頃に利用した場所が、こうして街の風景から姿を消していきます。
市が公表している解体工事・外構整備の期間は、2026年6月から2027年5月まで。なお、2027年5月以降も施工範囲を変えながら整備工事を行うと案内されています。
■ 倉敷市 屋内水泳センターの解体工事及び外構整備を行います
今回の写真も、完成した風景ではなく、街が変わっていく途中の記録です。
泳ぐ場所は、福田公園の新しいプールへ
屋内水泳センターの機能は、水島緑地福田公園に整備される新しい屋内プールへ集約される予定です。
市の案内では、2027年2月末の完成、2027年度上半期の供用開始を目指すとされています。今後の予定については、最新の公式案内を確認する必要があります。
慣れ親しんだ建物がなくなる寂しさはありますが、新しいプールもまた、これから利用する人たちの思い出の場所になっていくのでしょう。

[写真③:現地で撮影した写真/2026年10月21日撮影]
温水プールの跡地は、図書館を核とした交流の場へ
では、プールがなくなった後、この場所はどうなるのでしょうか。
倉敷市では、屋内水泳センターの跡地を含む市役所東側のエリアで、「倉敷市庁舎等再編整備事業(市民交流ゾーン整備)」を進めています。
計画では、水泳センターの敷地に中央図書館を核とした複合施設棟を配置。中央憩の家、倉敷労働会館、市民活動センターの機能に加え、国際交流情報コーナーなども備える予定です。
長く市民が泳ぎ、体を動かしてきた場所が、今度は本を読んだり、学んだり、人と交流したりする場所へと役割を変えていきます。
学生時代に泳ぎに来たこの場所を、将来は本を探しに訪れることになるかもしれません。温水プールの姿はなくなっても、市民が集う場所として、新しい歴史が重なっていくのでしょう。
■ 倉敷市「倉敷市庁舎等再編整備事業(市民交流ゾーン整備)」
建物がなくなっても、街の記憶を残す
毎日のように通っていた人もいれば、私のように学生時代に何度か利用した人もいる。訪れた回数は違っても、それぞれの暮らしの中に、このプールの記憶が残っているのだと思います。
街の変化を知るうえでは、新しくできる施設だけでなく、その場所に何があり、どのように親しまれてきたのかを残しておくことにも意味があります。
45年にわたり、多くの人が泳ぎ、体を動かしてきた倉敷市屋内水泳センター。
初めて倉敷市を取り上げた今回の「消えゆく風景」は、学生時代に利用した温水プールの、最後の姿を記録する回となりました。
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