マンションの大規模修繕は、住まいの安全性や快適さを維持するために欠かせません。しかし、業者選びや見積もりの確認を任せきりにすると、所有者が積み立てた大切な資金が、不当に高い工事費に使われるおそれがあります。
ご紹介の報道では、施工会社と設計コンサルタントによる受注調整に加え、業者の関係者が住民になりすまして修繕の議論に入り込む事例も取り上げられています。管理組合は、どのような点に気を付ければよいのでしょうか。
コンサルタントの「安さ」だけで選ばない
設計コンサルタントは、建物の調査や工事内容の検討、施工会社の選定などを支える専門家です。ただし、施工会社から報酬を受け取るなど、管理組合の利益と衝突する関係があれば、公正な助言が損なわれかねません。
国土交通省は、安いコンサルタント料金で受託し、施工会社からのバックマージンを目的に割高な工事へ誘導する事例を紹介しています。依頼料の安さに加え、実際の担当者や業務内容、施工会社との関係も確認することが大切です。
国土交通省「設計コンサルタントを活用したマンション大規模修繕工事の発注等の相談窓口の周知について」
相見積もりは「同じ条件」で比較する
複数社から見積もりを取っても、工事範囲や数量、使用する材料が違えば、総額だけでは適切に比較できません。国土交通省の資料にも、特定の会社だけに少ない工事数量を伝え、見積額を低く見せた事例が掲載されています。
こうした事例を踏まえ、管理組合では次の点を確認しましょう。
- 各社に同じ仕様書・数量表を渡しているか
- 工事項目ごとの数量や単価が明記されているか
- 追加工事が発生する条件は何か
- 保証や工事後の対応に違いはないか
国土交通省の実態調査も、同規模のマンションとの比較材料になります。ただし、調査時点や建物の劣化状況、工事範囲が異なるため、平均額を超えただけで不正と判断することはできません。
国土交通省「マンション大規模修繕工事の発注等の適正化について」
業者を決める過程を見えるようにする
報道にある「なりすまし」への対策としては、修繕委員などの参加資格を管理規約や委員会の運営ルールに照らして確認し、候補業者との関係を申告してもらう仕組みが考えられます。
また、候補会社を選んだ理由、比較した資料、審議の経過を記録し、所有者が確認できるようにしておくことも重要です。国土交通省も、業者選定における意思決定の透明性と、利益相反への注意を求めています。
判断に迷ったら、契約前に外部へ相談を
見積書の内容に疑問がある場合は、公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センターの「住まいるダイヤル」が相談先になります。契約前の見積書を対象とする無料のチェックサービスもあります。
ただし、大規模修繕では図面から個々の数量を確認することはなく、不正の有無を認定するサービスでもありません。利用条件を確認し、疑問点を整理するために活用しましょう。
住まいるダイヤル「リフォームの見積書に関する相談」
修繕の情報を、自分の資産を考える材料に
まずは総会資料や長期修繕計画に目を通し、予定する工事と積立金残高を確認してみましょう。売却を検討する場合も、修繕履歴や今後の負担予定を整理しておくと、購入希望者への説明に役立ちます。
適切な修繕と透明な運営を支えることが、安心して住み続けるためにも、将来の売却に備えるためにも大切です。
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