リクルートが行った「SUUMO賃貸契約者動向調査2024」によると、首都圏で賃貸契約をした人のうち「ハザードマップを確認した」と答えた割合は48.3%にのぼりました。前年より約5ポイント上昇し、いまや半数近い借り手が住まい探しの際に防災リスクを意識していることになります。
特に3人以上の世帯や学生など、家族や生活基盤を守る層で関心が高まっており、災害リスクが“入居判断の新しい基準”となりつつあります。
この流れは今後、地方の賃貸市場にも確実に広がっていくと考えられます。オーナーにとって「立地の安全性」は、もはや無視できない競争要素になりつつあります。
現状の課題:リスク情報が“見える化”され、物件の立地格差が顕在化
これまで賃貸物件の評価は、主に立地・家賃・築年数・設備などの条件で決まっていました。しかし、ハザードマップの閲覧が一般化するにつれ、「安全性」という新しい軸が加わっています。特に大雨や台風が増える昨今では、浸水リスクのあるエリアや河川近くの物件は敬遠されやすくなっています。
また、2020年の宅地建物取引業法施行規則の改正により、賃貸や売買契約時には「水害ハザードマップを用いた説明」が義務化されました。
これにより、借り手は契約前にリスク情報を必ず知ることができます。透明性が高まる一方で、オーナーにとっては「物件の弱点を説明せざるを得ない」という現実的な課題も生じています。
さらに、地方では自治体によるハザードマップの整備状況に差があり、古い情報が更新されていない地域もあります。そのため、実際のリスク以上に「危険エリア」と見なされ、借り手が敬遠するケースもあります。
地方の賃貸市場に広がる影響:選ばれる物件・避けられる物件の二極化
防災意識の高まりは、地方の賃貸市場に明確な二極化をもたらしています。
一つは、リスクの低い立地や高台の物件が“安心できる住まい”として再評価され、安定した入居需要を得るタイプ。
もう一つは、浸水や土砂災害リスクが高いエリアで、入居付けが難しくなるタイプです。
特に郊外や地方都市では、低地や河川近くの住宅街が多く、これまで「家賃の安さ」で人気だったエリアでも、今後はリスク情報が理由で選ばれにくくなる可能性があります。
実際に、自然災害の発生後には「ハザードマップを確認した結果、退去したい」という相談も増えています。入居者の防災意識が高まるほど、オーナーには“リスク説明責任”が重くのしかかるのです。
さらに近年では、水災補償を含む火災保険料が全国的に引き上げられており、特にリスクエリアでは保険会社による引き受け制限や料率上昇も見られます。
これにより、オーナーの経営コストにも影響が出始めています。
今後の流れ:リスク情報を“武器”に変える経営へ
ハザードマップの普及は、オーナーにとって厳しい現実を突きつける一方で、チャンスにもなり得ます。
災害リスクの少ないエリアの物件であれば、「安心して暮らせる物件」として訴求力を高められます。安全性をアピールすることで、家賃の安定化や長期入居にもつながります。
一方、リスクがあるエリアの物件でも、浸水対策・排水設備の強化・止水板の設置・避難経路案内など、具体的な防災対策を講じておくことで入居者の安心感を高めることができます。
「リスクを放置する物件」と「対策を取っている物件」では、印象が大きく異なります。
さらに、自治体の防災整備計画や土地利用規制の動向にも注目が必要です。災害危険区域の指定や建築制限が強化されれば、将来的な資産価値や再建築性にも影響します。早期の情報収集と対応が、長期的なリスク回避につながります。
まとめ:防災対応はコストではなく“信頼への投資”
ハザードマップを確認する借り手が増える今、オーナーに求められるのは「安全を売る」発想です。
立地リスクを正直に伝え、必要な対策を講じることで、借り手の信頼を得ることができます。
防災対応はコストではなく、長期的な入居安定と資産保全につながる“信頼への投資”と考えるべきでしょう。
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