安佐南区の不動産市場で進む「二極化」について
令和8年(2026年)9月、最新の都道府県地価調査が公表されました。
国土交通省によると、全国の地価は、住宅地・商業地ともに5年連続で上昇し、広島市でも地価の上昇傾向は続いており、ニュースだけを見ると、「今は不動産価格が全体的に上がっている」と感じる方も多いと思います。
とは言え、「地方四市(札幌市・仙台市・広島市・福岡市)ではいずれも上昇幅が縮小した」とも書いてあります。
実際、査定や売却相談の際に、
「今は土地が上がっているんですよね」
「もう少し待てば、さらに高く売れるのでしょうか」
と聞かれることもあります。
しかし、安佐南区を中心に日々不動産を見ている私の実感としては、単純に「不動産価格が上がっているのか」と考えると、少し実態と違います。
そもそも、地価公示と実勢価格はまた別物だと思います。
地価公示は、毎年1月1日時点の標準的な土地について、不動産鑑定士が算定した「正常な価格」です。一般の土地取引の目安にはなりますが、その価格で実際に売買されたわけではありません。
一方、実勢価格は、実際に売主と買主が合意した成約価格です。こちらの方がより実際の状況を表しているのは言うまでもありません。
今起きているのは、すべての不動産が一緒に値上がりしているというよりも、上がっている不動産と、ほとんど上がっていない不動産、むしろ売却が難しくなっている不動産との差が、以前より激しくなっているということです。
「平均値が上がっている」と「みんなが上がっている」は違います
最近は、給与や貯蓄額の話でも「平均値」だけではなく、「中央値」という言葉をよく聞くようになりました。
以前の日本は、総中流社会と言われていました。今は飛び抜けている方がとんでもなく飛び抜行けていて、諸外国のようになりつつあるように感じます。
例えば、10人のうち9人が同じくらいの貯蓄額でも、残りの1人が飛び抜けて多くの資産を持っていれば、その人が全体の平均値を大きく引き上げます。
その平均額だけを見ると、多くの人が実際よりも豊かであるかのように見えてしまいます。そこで、ちょうど真ん中の人がどのくらいなのかを示す「中央値」が注目されるようになっています。
現在の不動産市場にも、少し似たところがあると私は感じています。
もちろん、地価公示や地価調査の数字は、単純な平均貯蓄額と同じ仕組みではありません。それでも、「地価が上昇している」という全体の数字やニュースだけを見て、すべての土地が同じように上がっていると考えるのは危険です。
駅に近い土地、平地で利便性の高い土地、再開発が進む地域など、一部の上昇が目立つ一方で、郊外や坂道の多い住宅地、道路や高低差に問題がある土地などは、価格がそれほど上がっていないこともあります。
場合によっては、以前よりも買主が見つかりにくくなっている不動産もあります。
今の不動産市場を見るときは、「平均でどのくらい上がったか」だけではなく、どこが上がり、どこが上がっていないのかを見る必要があります。
首都圏の地価上昇と、安佐南区の住宅地は事情が違います
東京などの首都圏や一部の大都市では、再開発、インバウンド需要、国内外の投資資金、ホテルやマンション用地の取得などが地価上昇の要因になっています。
このような地域では、実際に住む人の給与水準や住宅ローンだけでなく、投資資金が不動産価格を押し上げることがあります。
しかし、安佐南区の住宅地は、そのような市場とは性格が違います。
安佐南区で土地や戸建住宅を購入する人の多くは、そこに実際に住むことを目的とした一般のご家庭です。
つまり、物件価格を最終的に支えているのは、買主の年収、自己資金、住宅ローンの借入可能額、そして毎月無理なく返済できる金額です。
祇園、西原、中筋、古市、大町、緑井、中須、長束、東原、川内など、一部の平地や利便性の高い地域では、土地価格の上昇が見られます。
しかし、その動きが安佐南区全域に同じように広がっているわけではありません。
また、土地そのものの上昇以上に、住宅を取得するための総費用が急速に高くなっていることの方が、現在大きな問題になっています。
土地よりも、建物や工事費の上昇が深刻です
現在は、建築資材、人件費、住宅設備、運送費などが上昇し、新築住宅の建築価格が以前より大幅に高くなっています。
それだけではありません。
古い建物を取り壊すための解体費、敷地を整える造成費、擁壁工事、樹木やブロック塀の撤去費、家財などの残置物処分費も上昇しています。
さらに、住宅ローン金利も、以前の超低金利の時代と比べると上昇方向に動いています。
仮に土地価格が以前とほとんど変わっていなくても、
- 土地代
- 建物代
- 外構工事費
- 造成費
- 解体費
- 登記などの諸費用
- 住宅ローン金利
これらを合計した住宅取得費は、確実に重くなっています。
一方で、一般の方の給与は住宅価格と同じ勢いで上がっているわけではありません。
その結果、「家を買いたくない」のではなく、欲しくても予算的に買えないという方が増えています。
ここが、地価は上がっているのに、すべての不動産が簡単に売れるわけではない大きな理由の一つです。
同じ安佐南区でも、価格差は非常に大きい
安佐南区は広く、地域によって不動産の特徴が大きく異なります。
令和8年地価公示の住宅地を見ると、祇園や山本では1平方メートル当たり20万円を超える地点がある一方、相田では4万円台の地点もあります。
公示地点は、それぞれ土地の形、面積、道路、駅までの距離などの条件が異なるため、価格だけを単純に比較することはできません。
それでも、同じ安佐南区内で、地域によってこれほど大きな差があることは分かります。
そして、実際の不動産価格は、町名や坪数だけで決まるものではありません。
同じ町内、場合によっては同じ住宅団地の中でも、
- 平地か坂道か
- 前面道路の幅は何メートルあるか
- 車が進入しやすいか
- 駐車場を2台以上確保できるか
- 土地に高低差があるか
- 擁壁に問題がないか
- 土地の形や間口はどうか
- 土砂災害などのリスクがあるか
- 駅、学校、買物施設までの距離はどうか
といった条件によって、売れ方は大きく変わります。
インターネットの自動査定では、このような細かな違いまで正確に反映することは困難です。
広い土地だから、高く売れるとは限りません
以前は、「土地は広い方が価値がある」と考えられることもありました。
もちろん、広い土地を探している方もいます。しかし現在は、土地が広くなるほど当然高くなり、購入できる人が限られるという問題があります。
さらに、その土地に住宅を建てるための建築費も上がっています。
例えば、土地価格だけなら予算内でも、新築住宅、外構、造成、住宅ローンの支払いまで含めると、買主の予算を超えてしまうことがあります。
そのため現在は、多少面積が小さくても、平地で利便性がよく、余分な造成工事が必要なく、駐車場を確保しやすい土地の方が売れやすい場合があります。
広い土地については、二つに分けて販売した方が、購入できる人が増えることもあります。
ただし、何でも分ければよいわけではありません。
分筆した結果、間口が狭くなったり、駐車場が取れなくなったり、建物の配置が難しくなったりすれば、かえって価値を下げてしまうことがあります。
土地を一括で売るのか、分けて売るのかを判断するためには、実際にどのような住宅が建てられるかまで考える必要があります。
古い家は、解体して売った方がよいのでしょうか
古い戸建住宅の査定では、
「建物は古いので、先に壊した方がよいでしょうか」
という相談もよくあります。
しかし、私は基本的に、査定を受ける前に急いで解体することはおすすめしていません。
築年数が古くても、建物を利用したいという買主が見つかる可能性があります。また、解体して更地にすると、固定資産税の負担が変わる場合もあります。
何より、現在は解体費自体が高くなっています。
建物を残したまま売った方がよいのか、売主側で解体して土地として売った方がよいのか、買主側に解体を任せた方がよいのかによって、手元に残る金額も変わります。
売却価格が高くても、そこから多額の解体費や造成費を支払うのであれば、必ずしも有利とは限りません。
大切なのは、表面上の売却価格だけではなく、最終的にいくら残るのかを比較することです。
査定価格が高ければ良いとは限りません
複数の不動産会社へ査定を依頼すると、会社によって査定価格が大きく違うことがあります。
当然、売主様としては、最も高い価格を提示した会社に期待されると思います。
しかし、査定価格は、その金額で売れることを保証するものではありません。
周辺の成約事例や買主の予算から大きく離れた価格で売り出しても、問い合わせが入らないまま時間だけが過ぎてしまいます。
そして、最終的に何度も値下げをすることになれば、長期間売れ残っている印象を買主に与える可能性もあります。
現在の市場では、
- 誰がこの不動産を購入するのか
- 購入後にどのくらいの工事費がかかるのか
- 土地建物を含めた総額はいくらになるのか
- その総額を負担できる買主がどのくらいいるのか
- 建物を残すのか、解体するのか
- 仲介と買取のどちらが適しているのか
ここまで考えなければ、現実的な売却価格は見えてきません。
地元の不動産会社だから分かることがあります
不動産価格は、インターネットで簡単に調べられる時代になりました。
しかし、不動産は同じものが二つとありません。
安佐南区では、数十メートル場所が変わるだけでも、道路事情、坂道、高低差、学校への距離、災害リスク、買主の希望する価格帯などが変わります。
現地を確認し、周辺でどのような住宅が建てられているか、その地域ではどのような価格帯の住宅が売れているか、建築会社や買取会社がその土地をどう評価するかまで考える必要があります。
「全国的に地価が上がっているから、この土地も上がっているはず」
「同じ町内で高く売り出している物件があるから、うちも同じ価格で売れるはず」
とは限りません。
大切なのは、平均的な相場だけではなく、その不動産が現在の市場で、誰に、どのような用途で求められるのかを見極めることです。
当社では、安佐南区を中心に、土地、戸建住宅、収益不動産などの売買を取り扱っています。
査定価格をお伝えするだけでなく、建物を残す場合と解体する場合、土地を一括で売る場合と分けて売る場合、仲介で売却する場合と不動産会社が買い取る場合など、それぞれの方法を比較しながらご提案しています。
まだ売却を決めていない方でも構いません。
「今すぐではないが、現在の価値を知っておきたい」
「将来、相続したときに売れる不動産なのか確認したい」
「解体や造成に、どのくらい費用がかかりそうか知りたい」
という段階でも、お気軽にご相談ください。

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