「不動産価格はまだ上がり続けているんでしょ?」
そんなイメージをお持ちの方は多いかもしれません。確かに大都市部の不動産価格は上昇が続いています。でも日本銀行が2026年4月に公表した金融システムレポートを読み込むと、少し違う景色が見えてきます。
このレポートは年2回、日本の金融システム全体のリスクを分析した公式文書です。不動産市場についても詳しく分析されており、今の状況を冷静に把握するうえでとても参考になります。
「不動産は平均で語れない」時代に入った
レポートが指摘しているのは、不動産価格が全体として上昇を続けている一方で、エリアによって明暗が大きく分かれているという現実です。
人口が集まる都市部では価格の上昇が続いていますが、人口密度が低い地域では横ばいか下落傾向が見られます。2008年ごろ以降、この立地による格差は急速に広がっており、「不動産市場は全国平均で語ることができない段階に入っている」というのがレポートの認識です。
例えば岡山県でも、岡山市や倉敷市などの県南では地価が堅調な一方、郊外や県北では下落傾向が見られると指摘されています。こうした二極化は岡山に限らず、全国の地方都市に共通する構図です。
「自分の物件があるエリアはどちらなのか」——今一度、立ち止まって考えてみる価値があります。
「日本の不動産は割安」という神話が崩れつつある
これまで日本の不動産は、海外の主要都市と比べて利回りが高く、投資先として魅力がありました。それが海外資金を呼び込み、価格上昇を支えてきた側面もあります。
しかし今回のレポートでは、その状況が変わりつつあることが示されています。不動産の利回りと長期金利の差(イールドギャップ)が大きく縮小しており、日本不動産の相対的な優位性が低下しているというのです。
長期金利の指標となる10年物国債の利回りは2026年4月に約29年ぶりの高水準を記録しました。金利がさらに上昇すれば、不動産投資の旨みはさらに薄れていく可能性があります。これまで価格上昇を支えてきた海外からの資金が、同じペースで流入し続けるとは限らない状況になってきています。
日銀が示した「もしもの想定」
レポートの中で特に注目したいのが、日銀が分析したリスクシナリオです。
海外の不動産ファンドが保有物件を売却したことをきっかけに市場が調整した場合、商業用不動産だけでなく住宅用不動産の価格も約25%、賃料も約10%下落するという想定が示されています。
「25%の下落」と聞くと大げさに感じるかもしれませんが、こうした動きは過去にも起きています。リーマン・ショック時には外資の不動産売却が引き金となって価格が急落した経緯があります。中東情勢の長期化などで世界的に長期金利が上昇しやすい環境が続けば、同様の影響が波及する可能性も否定できません。
これはあくまで「最悪のケース」の想定ですが、日銀が公式レポートで示したということは、ゼロではないリスクとして意識しておく必要があるということです。
「今が高値かもしれない」という視点を持つ
金融環境が安定して推移すれば、不動産価格はマイルドな上昇か高止まりが続くというのが基本的な見通しです。ただ、長期金利の上昇が続けば価格上昇の勢いが鈍化し、調整局面に入る可能性もレポートは示唆しています。
特に地方の不動産は、都市部と違って需要の下支えが限られます。人口減少が続く地域では、価格が下がり始めてからでは買い手が見つかりにくくなるリスクもあります。
「売るつもりはないけれど、今の価格がいつまでも続くとは思えない」という方は、まず今の物件がいくらで売れるのかを知っておくだけでも、判断の幅が大きく変わります。売ると決める必要はありません。ただ、選択肢として持っておくことの意味は、今の市場環境だからこそ大きいと思います。
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