これは、不動産に関する法律や税金の知識を、物語形式でわかりやすくお伝えするミニドラマです。
登場する人物や団体はフィクションであり、実在のものではありません。
「ここ、懐かしいね……」
午後のやわらかな風に吹かれながら、春香は兄の翔太と並んで、祖母が暮らしていたアパートを見上げた。
築40年を超えるその建物は、壁に小さなひびがいくつも入り、時の流れを静かに語っているようだった。
「このアパート、もうすぐ売ることになるんだよね?」
春香がつぶやくと、翔太がうなずいた。
「うん。でもちょっと気になることがあってさ。さっき業者さんから連絡があったんだよ。『この建物、もしかしたらアスベスト使ってるかもしれません』って」
「え、アスベスト? 昔よくニュースで聞いたよね。体に悪いって」
春香の表情が少しこわばる。
アスベスト(石綿)は、かつて広く使われていた建材で、吸い込むと肺に悪影響を与える可能性がある。健康被害が社会問題になったことも記憶に新しい。
「昔は防音とか断熱に便利ってことでよく使われてたんだ。でも今は、基本的に使っちゃいけないことになってるよ」
翔太はスマホを操作しながら続ける。
「ただ、全部がダメってわけじゃなくて。建材にアスベストが入ってても、空気中に飛び散らないとか、発散しない構造ならOKってことになってるんだ。ちゃんと国の基準をクリアしてるってことが条件だけどね」
「へぇ……そういうの、ちゃんと決まりがあるんだね」
春香は感心したように言ったあと、目の前のアパートに視線を戻す。
「古い建物って、売るのも簡単じゃないんだね」
「そうなんだよ。アスベストがあるかどうか調べるのも必要だし、もし解体するなら、専門の業者にお願いしなきゃいけない。費用もかかるし、近所の人にも配慮しないといけないしね」
春香は、祖母が長年暮らしたこの家に、そんな手間がかかるとは思ってもいなかった。
けれど、ただ古いというだけで片づけてはいけない何かが、この家にはあるのかもしれない。そんな気がした。
「ところでさ、最近“不動産売却王”ってサービスがあるの知ってる? 無料でネットから査定できるんだって。地域の相場も分かるし、最初の一歩としてはちょうどいいと思う」
翔太がスマホを差し出す。
「不動産屋に直接行く前に、こういうので情報を集めておけば、余計な失敗もしなくて済むし」
「うん……。やってみようかな。おばあちゃんが大事にしてた家だから、いい形で送り出したいしね」
春香は、外壁にそっと手を添えて、小さくうなずいた。
この家には、いろんな記憶が詰まっている。
たとえ古くても、思い出まで古びるわけじゃない。
そう思いながら、二人はゆっくりと歩き出した。

古い建物を手放す前に、知っておきたいこと
築年数が古い物件には、アスベストのように目に見えない問題が潜んでいることがあります。
特に健康や法律に関わることは、自分で判断せず、きちんと調査や専門家への相談を行うことが大切です。
アスベストに関する規制は、建築基準法のほかにも、大気汚染防止法や労働安全衛生法など複数の法律にまたがっています。
建物にアスベストが使われているか気になる場合は、まず調査専門会社や自治体の窓口に相談してみましょう。
※最終的な判断は、必ず専門家の指示を仰いでください。
まずは、自分の家の“今の価値”を知る
大切な家を手放すとき、何から始めていいかわからない……。
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今ある建物と、そこに残る記憶に向き合うこと。
それが、後悔しない売却の第一歩かもしれません。