これは、不動産に関する法律や税金の知識を、物語形式でわかりやすくお伝えするミニドラマです。
登場する人物や団体はフィクションであり、実在のものではありません。
春の終わり、緑がまぶしい季節。会社員の高橋翔太さん(42)は、父・一郎さんが他界してから初めて、父の部屋の整理に取りかかった。
書類棚の奥に眠っていたのは、いくつもの通帳と印鑑。翔太さんは、手続きが大変そうだと頭を抱えた。父がどの銀行と取引していたのか、全てを知っているわけではない。

そんなとき、妹の絵里から一本の電話が入った。
「翔太、知ってる?今ってマイナンバーで銀行口座の情報がまとめて分かるんだって」
「え?どういうこと?」
絵里が教えてくれたのは、2024年4月に本格運用が始まった「預貯金口座付番制度(マイナンバーによる口座情報の一元管理)」のことだった。
ひとつの銀行でマイナンバーを使って口座管理を申し込めば、他の銀行口座にもひも付けができ、相続人がその情報をまとめて把握できるという。
※正式には「預貯金口座付番制度」と呼ばれ、口座の所在を効率よく確認するための制度です。
「つまり、父さんが生前にマイナンバーで口座を登録してくれていたら、俺たちはわざわざ全ての銀行を調べる必要がないってことか」
翔太の胸に、一抹の希望がよぎった。
早速、父が主に使っていた銀行に問い合わせると、なんと父はすでにマイナンバーの登録を済ませていたという。銀行を通じて預金保険機構に情報が照会され、父のすべての口座情報が集約された。
「あの父が、こんな手続きを先にやってくれていたなんてな……」
翔太は、父の気遣いに胸が熱くなった。
この制度のおかげで、翔太たちは数週間かかると思われた相続の準備を、驚くほどスムーズに終えることができた。
相続に役立つ、もうひとつの制度「戸籍の広域交付」
そしてもうひとつ、便利な制度があった。それが「戸籍の広域交付制度」だ。
これまで相続の際には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本を取り寄せる必要があり、各地の役所を回る必要があった。
ところが現在は、最寄りの役場で全国の戸籍を一括で請求できるようになっている。
司法書士に相談したところ、
「これは本当に革命的ですよ。手続きの手間が半分以下になりますから」と教えてくれた。
翔太はこう思った。
「これからは、自分も準備しておかないとな」
不安よりも、備えを。
マイナンバーと聞くと、何となく不安を感じる人もいるかもしれない。
だが、通帳や印鑑をひとつずつ探し回る手間や、戸籍を求めて遠方の役所まで出向く苦労を考えると、その便利さは十分に実感できる。
もちろん、マイナンバーと銀行口座をひも付ける際には、本人確認情報(氏名・住所・生年月日)が一致している必要がある。
もし情報に変更がある場合は、銀行に届け出て情報を更新しておくことが大切だ。手続きは政府の「マイナポータル」からも可能である。
翔太は今、自分のマイナンバーと口座のひも付けを始めている。そして、母の分もフォローするつもりだ。
年金・災害・戸籍――広がる活用の場
さらに、2024年5月の法改正(マイナンバー法等の一部改正)により、公的年金の受け取り口座もマイナンバーとひも付けられるようになる。
本人が拒否しない限り、今後は年金受取手続きもよりスムーズになる見通しだ。
また、これらの制度は災害時にも役立つ。
万が一、通帳やキャッシュカードを失ってしまっても、マイナンバーで本人確認ができれば、他の銀行を通じて生活資金を引き出すことも可能になる。
そして2026年5月からは、戸籍にフリガナの記載が義務化され、もし誤りがある場合は修正の届け出が必要になる。
マイナンバーと戸籍情報の一致精度を高める、大切なステップである。
翔太はふと思う。
「便利になったのはいいことだけど、大切なのは準備しておくことなんだな」
不動産も含めた相続準備を
相続も、万が一の災害時も――備えがあるかどうかで、人生の安心感はまるで違ってくる。
もしあなたのご家族にも、大切な財産があるなら、今のうちに情報を整理しておくことが大切です。
その一歩として、「ウェーブハウス 不動産相続専門サイト」での無料査定を活用するのも、有効な選択肢の一つでしょう。
マイナンバー制度と組み合わせて、相続や売却をスムーズに進める準備につながります。
※この記事は一般的な制度や手続きを紹介するものであり、実際の相続や法的手続きについては、必ず専門家(司法書士・税理士・行政書士など)にご相談ください。