不動産を複数人で共有して所有することは、相続や贈与、夫婦での購入など、さまざまな場面で生じます。
しかし、共有名義の不動産では、他の共有者の意向によって不動産の扱いが左右されることがあり、「知らないうちに持分が売却されたらどうなるのか」「新たな共有者が入ると何が起きるのか」と不安を感じることもあります。
共有不動産は、それぞれの共有者が権利を持つ一方で、単独所有とは異なる制約もあります。結論からいうと、不動産全体の売却には共有者全員の同意が必要ですが、自分の持分だけであれば単独で売却することが可能です。今回は、この仕組みをはじめ、共有持分が第三者に譲渡された場合に起こり得るトラブルと、その対処法についてわかりやすく解説します。
共有名義の不動産は勝手に売却できるか
不動産全体は同意が必要

共有名義の不動産について、不動産全体を売却するためには原則として共有者全員の同意が必要です。
共有者のうち一人でも売却に反対している場合には、不動産全体を単独で処分することはできません。
これは、不動産全体の売却が共有物の処分にあたり、各共有者の権利に直接影響を与えるためです。
そのため、一部の共有者だけで売買契約を締結しても、他の共有者の持分まで有効に処分することはできません。
共有持分なら売却可能

一方で、各共有者が持っている共有持分そのものについては、それぞれが独立した財産権として扱われます。そのため、自分の共有持分については、他の共有者の同意を得ることなく単独で売却することが可能です。ただし、この場合に売却できるのはあくまで自分の持分のみであり、不動産全体の所有権を移転することはできません。買い手は新たに共有者となり、既存の共有者と同じ立場で共有関係に加わることになります。
なお、夫婦で居住している不動産など、物件の種類や状況によっては、持分の売却であっても別途確認が必要なケースがあります。具体的な売却を検討する際は、事前に専門家へ相談することをおすすめします。
ただし、共有持分を第三者へ売却する場合、他の共有者には「先買権(優先購入権)」が認められています(民法第260条)。これは、同じ条件であれば第三者より優先して買い取ることができる権利です。この手続きを省略すると、他の共有者との間でトラブルになる可能性があるため、売却前に他の共有者へ意向を確認しておくことが重要です。
共有名義の不動産を勝手に売却されたらどうなる
「持分買取業者」には注意が必要
共有持分の売却先として、持分を専門に買い取る業者が存在します。一般の買い手が付きにくい共有持分でも現金化できる点はメリットですが、こうした業者が新たな共有者となった場合、使用対価の請求や共有物分割請求といった法的手段を積極的に活用してくるケースも報告されています。安易に持分買取業者へ売却する前に、まず他の共有者への売却打診や、不動産会社・弁護士への相談を検討することをおすすめします。
第三者との共有でトラブル発生

共有持分が第三者に売却されると、それまで面識のなかった人物が新たな共有者になることがあります。
共有者は共有不動産について一定の使用や管理に関与する立場を持つため、従来の共有者同士では起きなかった調整が必要になることがあります。
たとえば、これまで一人の共有者が建物全体を使用していた場合、新たな共有者から持分割合に応じた使用対価や賃料相当額の負担を求められることがあります(請求の可否は状況によって異なります)。
また、不動産の管理方法や将来的な売却方針について意見が対立し、話し合いが難航することもあります。
さらに、新たな共有者は共有物分割請求(共有状態の解消を裁判所に求める手続き)を行うことができるため、共有状態の解消を求められる可能性があります。
協議で解決できない場合には、裁判所で共有物分割の手続きに進み、不動産の現物分割・競売・金銭での精算(価格賠償)といった方法が検討されることもあります。
トラブル解決には対処法がある

共有持分が第三者に移転し、共有関係に不安が生じた場合には、状況に応じて対応を検討する必要があります。
■不動産を維持したい場合
・新たな共有者の持分を買い取る
・弁護士に相談し、法的手続きを検討する
■不動産を手放してもよい場合
・新たな共有者と協議して全体を売却する
・自分の持分だけを売却して共有関係から離脱する
共有状態が長期間続くほど調整が難しくなることもあるため、早めに方向性を整理することが重要です。
まとめ

共有名義の不動産全体を売却するには原則として共有者全員の同意が必要ですが、自分の共有持分については単独で売却することができます。
そのため、他の共有者が持分を第三者へ譲渡した場合には、新たな共有者との間で使用方法や管理、将来的な処分について調整が必要になることがあります。
場合によっては、使用対価の請求や共有物分割請求などの問題に発展することもあります。
こうしたトラブルに対応するためには、持分の買い取り、不動産全体の売却、共有物分割の手続きなど、状況に応じた方法を選ぶ必要があります。
共有不動産は時間の経過とともに権利関係が複雑になりやすいため、早い段階で共有状態の整理を検討することが大切です。
共有名義になる前・なった直後にできること
共有不動産のトラブルは、事前の取り決めによってある程度防ぐことができます。たとえば、相続や購入時に共有名義になった段階で、共有者間で「管理方法」「売却する場合のルール」「持分を譲渡する際の手順」などを書面(覚書)にまとめておくと、後の紛争リスクを減らせます。法的拘束力の強さは書面の形式によって異なりますが、取り決めの内容を残しておくこと自体が、話し合いの基準になります。
まず、どこに相談すればいい?
共有不動産のトラブルは、状況によって適切な相談先が異なります。
- (1) 弁護士: 共有物分割請求や、他の共有者との交渉・訴訟が絡む場合
- (2) 司法書士: 持分の登記変更や、売買契約に関する書類手続き
- (3) 不動産会社: 持分や不動産全体の売却を検討する場合の査定・仲介
まずは複数の専門家に相談し、自分の状況に合った方針を確認することが大切です。
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