元気なうちに施設を選ぶ人は、まだ少数派
介護施設や高齢者向け住宅への入居を考えるとき、多くの人は「もう限界」「体が動かなくなった」というタイミングで決断します。「元気なうちから将来を見据えて施設を選ぶ」という方はまだ少数派で、現実には要介護状態になってから、あるいは急な入院をきっかけに施設探しが始まるケースが大半です。
そうした状況で見落とされがちなのが、「施設に移った後、自宅をどうするか」という問題です。本人や家族が施設への移行でバタバタしているうちに、かつての我が家はひっそりと「空き家」になっていきます。
サービス付き高齢者向け住宅という選択肢が広がっている
近年、高齢者の住まいの選択肢として「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」が注目されています。バリアフリー対応の賃貸住宅に、安否確認や生活相談のサービスが義務付けられており、有料老人ホームより費用を抑えられる点が特徴です。
自立期から入居できる施設では、外出・外泊の自由度が高く、「家に近い暮らし」を続けながら見守りも受けられます。介護が必要になってもそのまま継続して住み続けられる施設も増えており、「終の棲家」として選ぶ人が増えています。子どもがいないおひとりさまの高齢者にとっても、安心できる選択肢になりつつあります。
こうした施設の充実は、「元気なうちに住まいを整える」という動きを後押ししています。そしてそれは同時に、「これまでの自宅をどうするか」という問いを、以前より早い段階で突きつけることにもなります。
空き家になった実家が抱えるリスク
親が施設に移り、実家が空き家になると、さまざまなコストとリスクが静かに積み上がっていきます。
① 維持費は年間20万〜95万円
空き家の年間維持費は、固定資産税・都市計画税に加え、草刈りや定期的な換気・清掃、修繕費などを合わせると、年間20万〜95万円程度が目安とされています(出典:ALSOK「空き家の維持費はいくら必要?」)。誰も住んでいない家でも、所有している限り費用は発生し続けます。
② 放置すると固定資産税が最大6倍に
管理が不十分な空き家は、自治体から「特定空き家」に指定されるリスクがあります。指定を受けると、土地の固定資産税の軽減措置(200㎡以下で評価額1/6)が外れ、税額が最大6倍に跳ね上がる可能性があります(空家等対策の推進に関する特別措置法・国土交通省)。地方の古い一戸建てでも、このリスクは他人事ではありません。
③ 地方では売りたくても売れなくなる
地方都市では、少子高齢化と人口流出により住宅需要が年々縮小しています。今は売れる状態の物件でも、5年・10年後には買い手がつかない、あるいは値段がつかないという状況に陥るリスクがあります。空き家のまま放置して老朽化が進むほど、売却額は下がり、最悪の場合は「引き取り手がいない」ということにもなりかねません。
「3,000万円特別控除」には期限がある
自宅を売却する際に重要な税制上の優遇措置として、居住用財産の3,000万円特別控除があります。これは、マイホームを売って譲渡益が出た場合に、最大3,000万円まで所得から控除できる制度です。
ただし、この控除には期限があります。住まなくなった日から3年を経過する年の12月31日までに売却しなければ、原則として適用できません(出典:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」・「No.3314 過去に居住していたマイホームを売ったとき」)。親が施設に入居した年を起点に、時計は動き始めています。
施設入居後しばらく経ってから「そろそろ売ろうか」と動き出すと、この3年という期限をうっかり過ぎてしまうケースも少なくありません。税制上のメリットを活かしたいなら、入居後なるべく早い段階で売却の検討を始めることが大切です。なお、具体的な適用要件は状況によって異なりますので、税理士や不動産会社への相談を合わせておすすめします。
「決断できない」気持ちも、ごく自然なこと
親が長年暮らした家を手放すことに、感情的な抵抗を感じるのは当然のことです。「まだ元気に戻ってくるかもしれない」「思い出の詰まった家だから」という気持ちは、多くのご家族が持っています。
だからこそ、いきなり「売る・売らない」を決めようとするよりも、まず「今の市場でいくらで売れるのか」を知るところから始めてみるのがおすすめです。査定額を知ることは、決断を急かすものではありません。選択肢の幅を知るための、最初の一歩です。
まずは「今の価値」を知ることから
不動産の価値は、市場の動向や建物の状態によって変化します。「地方だから価値がない」と思い込んでいても、査定してみると意外な金額になることもあります。逆に、早めに動かないと価値が下がり続けるケースもあります。
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※本記事で紹介した税制上の特例は、適用要件が個別の状況によって異なります。具体的なご判断は税理士・不動産会社にご相談ください。
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