これは、不動産に関する法律や税金の知識を、物語形式でわかりやすくお伝えするミニドラマです。
登場する人物や団体はフィクションであり、実在のものではありません。
「よし、この退職金でローンを全部返してしまおう!」
春のある日、定年退職を迎えた父・浩一は、銀行から振り込まれた退職金の金額を見てそうつぶやいた。長年の勤めを終え、清々しい気持ちで通帳を眺めていたが、その一言を聞いて、同居していた娘の紗季が慌てて声を上げた。
「お父さん、それ、本当に全部返しちゃって大丈夫なの?」
浩一は驚いた顔をした。「え?だって、ローンを完済すれば安心じゃないか。金利だってバカにならないし…」

紗季はスマートフォンを手に、最近読んだ記事を見せながら話し始めた。
「確かに、昔は退職金でローンを全部返すのが“正解”って言われてたけど、今は時代が変わってるんだよ」
実は、今の日本は長引く低金利時代。浩一が抱えている住宅ローンの金利は1%以下。それに団体信用生命保険(団信)もついており、万が一のときはローンがゼロになる仕組みになっている。
「それって、ほぼ掛け捨て保険みたいなものでしょ?同じ保障を自分で保険に入って得ようとしたら、かなりの費用がかかるんだよ」
「それに、もし全部返しちゃったら、手元にお金が残らないでしょ?急な医療費や生活費に困ることもあるよ。お父さん、まだ少し働く予定なんでしょ?」
紗季の言葉に浩一は考え込んだ。確かに、再雇用で数年は働く予定だ。毎月のローン返済額はそれほど負担ではない。むしろ、退職金の一部を運用に回して少しずつ増やしていった方が安心かもしれない。
「なるほどな…老後の生活にゆとりを持たせるには、完済がすべてじゃないのか」
「それに、お父さん。もしローンの返済額が気になるなら、全部じゃなくて一部を繰り上げ返済して、月々の負担を軽くする方法もあるんだよ」
浩一は深くうなずいた。
「ありがとう、紗季。お前のおかげで、先走るところだったよ。人生100年時代、資金計画ってやつをしっかり考えなきゃな」
老後の安心は、目先の不安を消すことではなく、未来を見据えて備えること。完済という決断が、必ずしも「正解」ではない時代になった今、自分にとってのベストな選択をするためには、冷静な判断が求められる。
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