これは、不動産に関する法律や税金の知識を、物語形式でわかりやすくお伝えするミニドラマです。
登場する人物や団体はフィクションであり、実在のものではありません。
「まさか、こんなことになるなんて…」
タイルが剥がれ落ちた外壁。駐輪場にたまる雨水。そして住民たちの不安げな声。
築5年。駅から徒歩5分の好立地。パンフレットには「資産価値の高い住まい」と書かれていた。実際、購入当初は誇らしい気持ちさえあった。しかし、時が経つにつれて不具合が次々と浮かび上がってきた。

そんな中、管理組合の理事長を務める佐藤さんは、夜遅くまで理事会の資料を読み込んでいた。雨漏りの苦情が増え、耐震性への疑念も浮かび上がっていた。専門家に相談したところ、「これは明らかに瑕疵(かし)だ」と指摘を受けた。
「売主に責任を問えないのか?」
理事会で声が上がる。実際、法律ではマンションの引き渡しから10年以内に欠陥が見つかれば、売主が損害賠償に応じる義務がある。しかし、問題は簡単ではなかった。
このマンションには、中古で入居した住民も多くいた。2016年の東京地裁の判決では「中古購入者がいると管理組合は損害賠償の訴訟を起こせない」とされたのだ。
つまり、訴えるには過去の所有者一人ひとりから同意を得て、請求権を譲渡してもらわねばならない。
「無理じゃないか…そんなの…」
誰もが頭を抱えた。どこに住んでいるかも分からない元所有者を探し、連絡を取るという手間と時間。それに応じてもらえるかどうかすら分からない。そんな現実の壁に、理事会は膠着していた。
しかし希望の光は、2026年4月に差し込むことになる。
政府は区分所有法を改正し、「管理組合が現在の住人全体を代表して損害賠償を請求できる」ことを明確にしたのだ。これにより、過去の所有者の同意を得る必要はなくなり、組合が主体となって法的手続きを進めやすくなる。
さらに、国土交通省は「標準管理規約」も見直し、「過去の所有者が受け取った賠償金の使途に口を出せない」と明記する方針を打ち出した。これにより、住民同士のトラブルや「持ち逃げ」のリスクも減る。
「ようやく…ようやく、戦える土台が整った」
佐藤さんはそうつぶやきながら、再び理事会の議事録をまとめ始めた。これは、マンションという『小さな社会』を守るための、最初の一歩だった。
安心して暮らせる住まいは、放っておいて手に入るものではない。皆で動き、守り、支え合う中で築かれていくものなのだ。
あなたの住まいも、こうした課題を抱えていませんか? 小さな違和感や不安こそが、大きなトラブルの前兆かもしれません。
まずは自分の資産価値を知ることが大切です。
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