これは、不動産に関する法律や税金の知識を、物語形式でわかりやすくお伝えするミニドラマです。
登場する人物や団体はフィクションであり、実在のものではありません。
ある女性の体験から学ぶ「三為契約」の話
ある晴れた午後、静かなカフェで香織さんはコーヒーを前にスマホの画面をじっと見つめていました。不動産投資を始めようと思っていた矢先、魅力的な物件を見つけたのです。しかし、その契約内容にどうしても違和感があった――。そんな出来事から、この物語は始まります。
「この物件、すごく立地がいいし、価格も手ごろ。けど……なんだか引っかかるのよね」
不安を感じた香織さんは、不動産に詳しい友人の涼子さんにLINEで相談をしました。
「それ、もしかして“三為契約”ってやつかもしれないね」と、涼子さん。
「三為契約……?それって何?」
涼子さんは、少し笑いながら丁寧に説明を始めました。

第三者のための契約?それが「三為契約」
「三為契約っていうのは、正式には“第三者のためにする契約”のこと。たとえば、不動産の売主Aさんから買主Cさんに物件を売るんだけど、その間に不動産業者B社が入る場合があるの。B社は転売目的でAさんから物件を安く仕入れて、Cさんに高く売るのね。」
「えっ、それって問題ないの?」
「三為契約は、民法上は有効な契約の一形態なの。つまり法律上は禁止されていないわ。ただし、仕組みをよく知らないまま契約すると、経済的に不利になることがあるの。」
「どういうこと?」
「実はこの契約方法、登記や税務処理などの都合から、B社が自分の名前で登記をせずに、直接AさんからCさんに所有権を移すって形をとることがあるの。でもその背後では、間に業者が利益を上乗せしてる場合もあるのよ。」
香織さんが直面した現実
数日後、香織さんは物件の内見を終え、買付申込を進めようとしていました。契約書に目を通していると、「第三者への直接移転」などの文言が目に留まりました。
「もしかして、これ……?」
すぐに涼子さんに書類を見せたところ、「これはまさしく三為契約。注意した方がいい」と即答されました。
なぜ三為契約に注意が必要なのか?
涼子さんは言います。
「たとえば、売主Aさんと買主Cさんが直接契約すれば、仲介手数料くらいで済むの。でもB社みたいな転売業者が入ってると、Cさんは相場よりも高く買わされることが多いのよ。」
「登記にはその業者の名前が出ないから、気づきにくいのが厄介なの。」
さらに涼子さんは、驚くような事例を語ってくれました。
「これは知人から聞いた話なんだけどね。A→B→C→D→Eと、4社も間に入って転売された例があるの。そのたびに200万円ずつ利益が上乗せされて、最終的に買ったEさんは相場よりずっと高く買ってしまっていたのよ。しかも、元の売主であるAさんは安く売らされていたという話。」
香織さんは、その話に思わず背筋が伸びる思いでした。
じゃあどうすればいいの?
売主・買主別に見る三為契約の見抜き方
涼子さんは「三為契約」を避けるために、次のような対策をアドバイスしてくれました。
売主向けの対策
三為契約はお断りの意思を明確に
「中間業者を介した三為契約には応じません」と、事前に伝えておくと良いでしょう。あらかじめ伝えることで、業者側も諦めやすくなります。
契約から決済までの期間が不自然に長い場合は要注意
決済まで3〜6ヶ月など長期にわたる場合、実際の購入者(エンドユーザー)がまだ決まっておらず、三為契約の可能性があります。
買主向けの対策
契約書の特約条項を事前にチェック
「第三者への所有権移転」などの記載があれば、三為契約が行われている可能性があるため、慎重に判断しましょう。
登記簿で現在の所有者を確認する
契約上の売主が宅建業者でも、登記名義が個人の場合、業者が間に入っている三為契約の可能性があります。
不動産取引は慎重に
涼子さんは最後に、香織さんにこう言いました。
「不動産って、知識があるかどうかで何百万円も損得が分かれる世界なの。特に“三為契約”みたいな落とし穴に気づかずに進めると、本当に後悔することになるわよ。」
香織さんはうなずきました。そして決意します。
「今回は見送って、もっと勉強してからにするわ。」
あなたも気をつけて
不動産売却時には必ず確認を!
今回の香織さんのように、不動産の売買には一般の方には分かりにくい契約や仕組みが存在します。
特に「三為契約」のような形態には十分な注意が必要です。
もしあなたが不動産を売却しようとしているなら、「不動産売却王」の無料オンライン査定をぜひご利用ください。
信頼できる不動産会社があなたをサポートし、安心・納得のいく売却を実現するお手伝いをします。
大切なのは、他人事と思わず、自分自身でしっかり情報を集め、信頼できるパートナーを見つけること。
香織さんのように、後悔しない選択をしてくださいね。
※この記事は一般的な情報提供を目的としています。不動産契約には法的な要素が多く含まれるため、具体的な契約については宅地建物取引士や専門の法律家などの助言を必ず受けるようにしてください。