これは、不動産に関する法律や税金の知識を、物語形式でわかりやすくお伝えするミニドラマです。
登場する人物や団体はフィクションであり、実在のものではありません。
「ねえ、お父さん、あそこに新しい家が建つらしいよ」
日曜の朝、近所を散歩していた小学6年生の美咲が、海沿いの更地を指さして言った。
そこは長年空き地だった場所で、春の風が海から吹き抜けてくる、気持ちのいい場所だった。
「うーん…でも、あそこ、昔、台風の時に水が出たって聞いたことがあるな」
心配性の父・啓太は、ぼんやりとした記憶を手繰りながら答えた。
近所に長く住む人から「津波や高潮で被害を受けたことがある」と聞いたことがあったのだ。
その夜、家に戻った啓太は、ふと気になってパソコンで調べてみた。
「災害危険区域…?」見慣れない言葉が、検索結果に現れた。
役所で明かされる「災害危険区域」の現実
翌日、啓太は町役場の建築課を訪ねた。
「実は、あの海沿いの土地について知りたくて…家が建つと聞いたんですが」
応対した職員は、資料をめくりながら静かに答えた。
「実はあの場所、『災害危険区域』に指定されています。津波や高潮、出水などのリスクが高くて、条例に基づき、住居用の建物の建築が制限または禁止されている区域なんです」
「やっぱり…」
「建築基準法第39条に基づいて、地方公共団体がこうした区域を条例で指定することができます。
人命や財産を守るために、建築の用途や構造に制限をかける仕組みです」
実際、過去にはその区域で床上浸水の被害が出た記録もあったという。
住む前にそれを知らなければ、取り返しのつかないことになっていたかもしれない。
家を建てるって、どういうこと?
帰宅した啓太は、美咲にやさしく語りかけた。
「なあ美咲、家って、ただ好きな場所に建てればいいってもんじゃないんだな」
「どうして?」
「安全かどうか、それが一番大事なんだよ。
見た目や景色だけじゃなくて、災害が起きたときに家族を守れるか――それを考えないといけないんだ」
数週間後の変化
数週間後、美咲と啓太が再びその場所を訪れると、以前あった「建築予定地」と書かれた看板が取り外されていた。
「お父さん、あれ? 家、建たないの?」
「うん、役所に確認した人がいたんだろうな。災害危険区域だって分かって、計画が中止になったんじゃないか」
その土地には、今も潮風が吹き抜けていた。
静かな海を見つめながら、啓太は心の中でつぶやいた。
(命を守るための法律って、こうやって人知れず働いてるんだな)

【建築基準法で守られる命】
住んではいけない場所がある理由
家を建てる前、または買う前に、必ず確認してほしいのが「災害危険区域」に該当するかどうかです。
津波、高潮、洪水などの自然災害リスクが高い土地は、地方公共団体が条例に基づいて「災害危険区域」として指定できます。
建築基準法第39条によって、こうした区域では建物の構造や用途が制限されることがあります。
これは、命を守るための法律です。
魅力的な景色や好立地の土地でも、過去に被災歴がある場所であれば、将来的なリスクを抱える可能性があります。
まずは“その土地の本当の価値”を知ることから
土地や建物の価値を知ることは、安全で安心な暮らしへの第一歩です。
「この土地に家を建てても大丈夫かな?」
「今住んでいる場所のリスクは?」
そんな不安があるときには、不動産のプロの目で確認してもらうのがおすすめです。
今の家や土地の価値を調べるなら、無料で不動産を査定できるサービスを活用してみてください。
※災害危険区域の指定や建築の可否については、最終的に自治体や専門家に確認してください。