岡山市中心部を歩いていると、昔から見慣れていた建物が少しずつ姿を消していることに気づきます。
不定期連載「消えゆく風景」。今回取り上げるのは、岡山市北区野田屋町の岡ビルです。
戦後から長く「岡山の台所」として市民に親しまれてきた岡ビル市場は、2026年8月末で営業を終了。野田屋町一丁目2番3番地区第一種市街地再開発事業に伴い、建物も解体されることになりました。

戦後の岡山から始まった岡ビルの歴史
岡ビルの歴史をたどると、終戦翌年の1946年までさかのぼります。
前身となる「岡山マーケット」が設立され、その後1951年に現在の岡ビルが完成しました。
建物は鉄筋コンクリート造で、1階が市場、2~4階が市場で働く人たちの住居という、商売と暮らしが一体になった建物でした。
開業当初は鮮魚や青果など数多くの店が並び、店主とお客さんが言葉を交わしながら買い物をする対面販売が長く続けられてきました。
スーパーマーケットや大型商業施設が当たり前になる以前から、岡山市民の食生活を支えてきた場所です。
2026年8月末、75年の歴史に幕
再開発に伴い、岡ビル百貨店は各店舗に対して2026年8月末までに営業を終了するよう呼びかけていました。
もちろん、すべてのお店が同じ日に閉店したわけではありません。再開発を前に、移転した店舗や一足早く営業を終えた店舗もあり、時間をかけて少しずつ市場の風景が変わっていきました。
そして8月1日には「サンキュー岡ビルさよならマルシェ」が開催され、既存店舗や飲食・物販店の出店、岡ビル見学会なども企画されました。
75年という長い年月を考えると、岡ビルで買い物をした記憶を持つ人は一世代、二世代ではありません。
「昔、家族と買い物に来た」「年末の買い出しに訪れた」という記憶も含め、岡ビルは建物以上の存在だったのではないでしょうか。

跡地では「野田屋町1丁目2番3番地区再開発」
岡ビルを含む一帯では、「野田屋町一丁目2番3番地区第一種市街地再開発事業」が進められています。
計画では、大きく分けて
①店舗・ホテル棟
②住宅棟
③駐車場棟
の3棟が整備される予定です。
住宅棟はRC造19階建てで、2~19階が住宅となる計画です。
かつて市場と住居が一つの建物に共存していた場所が、今度は商業・宿泊・住宅などの機能を持つ新しい街区へと生まれ変わることになります。
再開発は当初計画から長期化
この再開発は、当初想定されていたスケジュールから大きく変化しています。
現時点で示されている予定では、
2026年10月 解体工事着手
2028年4月 本体工事着工
2031年4月 竣工
となっています。
再開発事業は権利調整や工事費、事業計画などさまざまな要素が関係するため、スケジュールが変更されることも珍しくありません。岡ビルの再開発についても、今後さらに予定が変更される可能性があります。
長年親しまれてきた建物が姿を消してから、新しい街が完成するまでには、しばらく時間がかかることになりそうです。
消える風景と、新しく生まれる風景
1951年から約75年。
岡ビルは、戦後の岡山から現在まで、街の変化を見続けてきました。
建物が解体されれば、1階に市場、その上に住居がある独特の姿も、実際の街並みとして見ることはできなくなります。
一方で、この場所には2031年、新しい店舗やホテル、住宅などを備えた街区が誕生する計画です。
街は変わり続けます。そして不動産の価値も、建物だけでなく、道路や商業施設、住宅、再開発など周囲の変化とともに動いていきます。
だからこそ新しい建物だけを見るのではなく、その場所に以前何があり、どのように街が形成されてきたのかを記録しておくことにも意味があるのではないでしょうか。
長年、市民の暮らしを支えてきた岡ビル。
その姿が岡山の街から消える前に、75年間の「岡山の台所」に感謝しつつ、記憶に残しておきたい風景です。
■ バックナンバー
・消えゆく風景(1)岡山駅前
・消えゆく風景(2)岡山ロッツ
・消えゆく風景(3)柳川交差点
・消えゆく風景(4)表町界隈
・消えゆく風景(5)岡山駅前ビル
・消えゆく風景(6)ハリウッド本店
・消えゆく風景(7)西大寺商店街の時計台
・消えゆく風景(8)岡山駅前の噴水
・消えゆく風景(9)再開発が進む桃太郎大通り沿いの風景
・消えゆく風景(10)岡山市民会館
・消えゆく風景(11)はるやま本社ビル
・消えゆく風景(12)岡山市役所
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