※この記事の登場人物・会話・内容はフィクションです。実在の個人・団体とは一切関係ありません。
東京都郊外にある「あかつきマンション」。築42年のその建物は、かつて活気あふれる若い家族の住処だった。今では住人の多くが高齢者となり、エレベーターは老朽化、外壁にはひびが入り、何より管理組合の総会はいつも「定足数不足」でまともに議決ができない状況が続いていた。
管理組合の理事長、佐々木さん(68)は頭を抱えていた。

「修繕したくても、反対する人や所在不明の所有者がいて決まらない。このままじゃ危ないぞ…」
そんなとき、地域の自治会が主催する説明会に参加した佐々木さんは、あるニュースを耳にする。
「2025年に“老朽化マンション対策法”が改正され、合意形成や再生がしやすくなりました」
この法律(正式名称:「老朽化マンション等の管理及び再生の円滑化等を図るための建物の区分所有等に関する法律等の一部を改正する法律」、2024年6月14日公布)は、現場の声に応える形で改正されました。
説明会では行政職員が丁寧に改正点を説明してくれた。
「例えば、これまでは大規模修繕など重要な事項には “区分所有者全体の過半数” の賛成が必要で、所在不明者がいる場合などには合意形成が困難でした。今回の法改正により、条件を満たすマンションでは“総会出席者の過半数”で決議できるようになります。所在不明者の議決権も、裁判所の認定で除外できるようになりました」
「本当ですか? あの3部屋ずっと空き家で誰が所有してるかも分からなかったんです…」
佐々木さんの目が一気に明るくなる。
かつては一括売却や取り壊しといった大きな決断には、全員の合意が必要とされ、なかなか前に進めませんでした。
しかし今回の法改正により、それらについても建替えの場合と同様に 5 分の 4 (80%) 以上の賛成があれば実行可能となり、現実的な選択肢として大きく前進しました。
「これで、あきらめずに済むかもしれない」
佐々木さんはすぐに管理組合の臨時総会を開き、法律改正の内容を資料にまとめて配布した。
「建替えもリノベーションも可能性が広がりました。ただ、どの道を選ぶにしても今ここで動かないと、取り返しがつかなくなるかもしれません」
住人たちの反応はさまざまだった。中には、「この家に思い入れがある。変えたくない」と語る人もいた。
しかし、老朽化による安全面の不安や、再生によって生活環境が良くなる可能性が共有される中で、多くの住人が前向きに考えるようになっていった。
さらに佐々木さんは、区の窓口に相談し、「マンション管理適正化支援法人」として登録された団体の協力を得ることに。専門家によるサポートで、合意形成の方法や資金計画の見直しが進められ、住民の不安も少しずつ和らいでいった。
ある日、外壁のタイルが落ちて通行人の近くに落下する事故が起きた。幸いけが人はいなかったが、この出来事が住民の間で「今こそ動かねば」という気運を生み出すことになる。
「やはり、待ってはいけない。動くなら今しかない」
数カ月後、「あかつきマンション」は一棟全体のリノベーション計画をスタートさせた。多数決による議決、所在不明者の除外認定、管理人制度の導入、行政の助言と補助――かつては不可能と思われていた道が、今や一歩ずつ現実のものとなっていった。
「マンションは、ただ建物を維持するだけの場所ではない。ここに住む人の人生、思い出、未来が詰まっているんです」
佐々木さんの言葉に、住人たちは静かにうなずいた。
老朽化に悩むマンションは、今や日本中に数百万戸あると言われています。しかし、2025年の法改正によって、再生の道は確実に開かれました。
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