「マイホームはもう手が届かない」——そんな声が聞かれる一方で、購入を後押しする住宅ローン控除の使い勝手も、少しずつ変わってきました。価格が上がっても控除の恩恵が比例して増えるわけではない。その理由を、売却や住み替えを考える方の視点でひもといていきます。
価格は上がっても、控除には上限がある
首都圏の新築マンション価格は、上昇が続いています。不動産経済研究所の発表によると、2025年度(2025年4月〜2026年3月)の首都圏新築分譲マンションの平均価格は9,383万円で、前年度より15.3%上昇し、5年連続で過去最高を更新しました。東京23区にいたっては平均1億3,784万円と、3年度連続で1億円を超えています。
一方で、住宅ローン控除の恩恵は、価格の上昇ほどには広がっていません。住宅ローン控除とは、年末のローン残高に一定の控除率(現在は0.7%)をかけた額を、所得税などから差し引ける制度です。ただし、控除の対象になる借入額には「借入限度額」という上限が設けられています。2026年以降に入居する住宅では、省エネ性能の高い認定住宅でも、限度額は4,500万円(子育て世帯・若者夫婦世帯は5,000万円)が上限とされています。
つまり、物件価格が上がってローンの借入額が増えても、限度額を超えた部分は控除の対象になりません。高額な物件ほど、控除でカバーできる割合は小さくなります。価格が上がるほど「お得感」が薄れて見えるのは、このためです。
地方都市の物件は控除を活かしやすい
この構図は、地方都市で家を売る・住み替える方にとっては、見方を変えると一つのヒントになります。
首都圏の高額物件では借入額が限度額を大きく上回りがちですが、地方都市の戸建てやマンションは、価格が借入限度額の範囲内に収まるケースが少なくありません。その場合、買い手はローン残高の多くを控除の対象にでき、制度の恩恵をより素直に受けられます。
これは、地方都市の物件を売り出すときに、買い手にとっての「買いやすさ」が残っているということでもあります。価格が手の届く範囲にあり、なおかつ控除も活用しやすい。この組み合わせは、購入を検討する層にとって安心材料になります。
ただし、2026年以降の住宅ローン控除は、住宅の省エネ性能によって限度額が変わる仕組みへと移っています。新築では性能の低い住宅の扱いが厳しくなる方向で、中古住宅についても、性能や条件によって限度額や控除期間が異なります。築年数の経った住まいを売る場合、買い手がどの程度控除を使えるかは以前ほど一律ではないため、個別の条件は確認が必要です。
売却や住み替えを考えるときの見方
住宅ローン控除のルールは、買い手の予算感や購入意欲に影響します。売る側にとっても、買い手がどんな制度を使えるのかを知っておくと、売却の見通しが立てやすくなります。
とくに住み替えを考えている方は、「今の家を売る」ことと「次の家を買う」ことの両方に税制が関わります。次に省エネ性能の高い住宅を選べば控除を受けやすい一方、今の住まいの売却益には別の税金(譲渡所得税)が関わる場合もあります。一つひとつを切り離さず、全体で見て判断することが大切です。
制度の細部は年度ごとに見直されるため、検討の時点で最新の内容を確認しておくと安心です。そのうえで、まずは「自分の物件が今いくらで売れそうか」という現在地を知っておくと、住み替えや売却の計画が具体的になります。
まとめ
価格の上昇と控除の上限のズレは、地方都市の物件にとってはむしろ、買い手の動きやすさにつながる面があります。制度の最新情報と、自宅のおおよその価値を押さえておくことが、次の一歩の土台になります。
まずは今の価値を知ることから
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※住宅ローン控除の借入限度額や適用条件は年度ごとに見直されます。最新の内容は国土交通省などの公的情報をご確認ください。
出典:不動産経済研究所「首都圏 新築分譲マンション市場動向 2025年度」(不動産経済研究所)
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