総務省の「市町村税課税状況等の調査(2023年度)」によると、全国の土地にかかる固定資産税収のうち、およそ2割が東京都23区に集中しています。
東京23区の土地面積は全国のわずか1%に過ぎませんが、評価額の高さにより税収が突出しているのです。2023年度の土地分の固定資産税はおよそ7,700億円と、10年前から3割以上も増加しています。
この背景には、都心部の再開発や人口集中、オフィス・商業施設の建設などによる地価上昇があります。国土交通省の基準地価(2025年7月時点)では、東京23区の商業地が前年比13.2%上昇と、全国平均(2.8%)を大きく上回りました。
つまり、都市の活性化が税収の集中をさらに加速させているのです。
しかし、固定資産税の増加が「都市の活気の証」である一方で、地方の土地所有者や自治体にとっては、深刻な構造的課題を浮き彫りにしています。
現状の問題提起:税収構造が示す地域格差の拡大
固定資産税は本来、地方自治体の貴重な財源です。土地や建物の評価額に応じて課税されるため、地域の地価が下がれば自動的に税収も減少します。
東京23区の税収が伸びる一方で、人口減少や地価下落が進む地方都市では、税収の減少とインフラ維持費の増大という二重苦に直面しています。
特に郊外や農村部では、空き家・空き地の増加により課税ベースそのものが縮小しています。地方自治体の中には、公共施設の維持や除雪費、上下水道網の整備といった日常的なサービスの財源確保が難しくなっているところも少なくありません。
このままでは、固定資産税という“地域の命綱”が、都市と地方の格差を広げる要因になりかねません。
さらに問題なのは、固定資産税の評価制度が「全国一律のルール」で運用されている点です。
固定資産税の評価は、3年に一度の「評価替え」で全国共通の基準に基づいて見直されます。経済成長の恩恵を受ける都市部と、過疎化で資産価値が下がる地方を同じ枠組みで扱うことに限界が見え始めています。
結果として、地方の地価が上がらないまま、税負担だけが相対的に重く感じられる構造が生まれているのです。
地方に与える影響:人口減少と資産価値下落の連鎖
東京に固定資産税が集中するということは、裏を返せば「地方から経済・税収が流出している」ことを意味します。
地方では企業の移転が進まず、雇用や所得の減少によって住宅需要が弱まっています。土地を所有しても買い手や借り手が見つからず、“持っていても収益を生まない土地”が増えているのが現実です。
また、自治体に税収が入らなければ、道路整備や公共施設の維持、地域振興のための予算も削減されます。こうしたインフラの老朽化や行政サービスの縮小は、さらなる人口流出を招き、地価下落を加速させる悪循環を生み出しています。
地方の土地オーナーにとって、これは「資産価値の目減り」と「将来の税負担増加」という形で直接的に影響します。
さらに、地方の空き地・遊休地は適正な評価が難しく、“実態に見合わない固定資産税”が課されているケースも見られます。利用価値の低い土地に税金を払い続けることに疲れ、相続放棄や売却を検討する人が増える可能性があります。
このように、東京への税収集中と地方の資産価値下落という“二重の格差”が、いま日本の不動産市場で進行しているのです。
今後の展望:東京一極集中の是正と、地方税制の見直しへ
総務省は、今回の調査結果を踏まえて「税収の東京集中を是正する必要があるか」を検討しています。
今後は、地方への財源移譲や、固定資産税の地域調整措置が議論される見通しです。
ただし、制度改正には時間がかかるうえ、東京への企業集中が経済合理性の面からすぐに変わる可能性は低いと専門家は指摘しています。
このような中で、地方の土地オーナーが取るべき方向性は明確です。
一つは、土地を「眠らせないこと」。農地転用や駐車場経営、賃貸・太陽光発電用地など、資産を動かして収益化する発想が欠かせません。
もう一つは、地価や評価額の変動を定期的にチェックし、必要に応じて評価の見直しを申請することです。自治体によっては、利用状況の変化に応じて課税額を軽減できるケースもあります。
また、近年では地方自治体が企業誘致や移住支援を通じて土地需要の再活性化を目指す動きもあります。
今後、こうした地域施策と連携し、自分の土地を「地域の再生資源」として活かす視点がますます重要になっていくでしょう。
まとめ:土地は“持つ時代”から“活かす時代”へ
固定資産税の東京集中は、単なる税の話ではなく、地域経済の格差を象徴する現象です。
地方の不動産オーナーにとっては、「土地をどう守り、どう活かすか」がこれからの資産戦略の鍵になります。
使わない土地ほど税負担が重く感じられる時代だからこそ、早めに資産の棚卸しを行い、現実的な運用を考えることが大切です。
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