中古戸建て住宅の人気が高まっています。首都圏では、2025年春の中古戸建て成約件数が前年同期比で52％増加し、6四半期連続の上昇という勢いを見せました。
建築資材の高騰や人手不足の影響で新築価格は年々上昇しており、比較的手の届きやすい中古住宅に注目が集まるのは自然な流れです。
しかし、その一方で浮かび上がってきたのが「補修費」という新たな課題です。築年数が経過した中古住宅では、外壁や屋根、配管、断熱材などの劣化が進行しているケースが多く、購入後に100万円単位の修繕費が発生することもあります。
住宅診断（ホームインスペクション）の急増と背景
特に首都圏では、中古戸建て市場が活況を呈しており、ホームインスペクションへの関心も高まっています。診断費用は、延床30〜40坪程度の住宅で、調査範囲によって異なりますが、詳細な調査を含めると9〜13万円前後になることもあります。しかし、後のトラブルを防ぐ「保険」としての価値が評価されています。
この流れは今後、地方にも波及していくとみられます。主要な地方都市では築20年以上の戸建てが多数を占め、空き家予備軍も少なくありません。こうした物件を有効活用するには、売主・買主双方が「建物の状態を見える化する」取り組みが不可欠です。
さらに、地方の不動産業者や自治体が住宅診断士の育成に取り組めば、地域全体で安心できる取引環境を整えられるでしょう。
地方における影響と課題
地方では、リフォーム前提で中古戸建てを購入する層が増加しています。移住希望者や二拠点生活を考える人々にとって、手ごろな価格で広い住まいを確保できることは大きな魅力です。
一方で、住宅診断を受けるための専門業者が都市部に偏っており、地方では診断の機会そのものが限られるという課題もあります。今後、地方の不動産業者が診断サービスと連携し、地域密着型の安心取引体制を整えることが求められます。
今後予想される流れ
今後は、中古住宅市場において「診断付き物件」が標準化していく可能性が高いでしょう。
国も既に住宅の長寿命化や中古流通の活性化を重視しており、将来的には住宅診断の実施を前提とした売買が一般的になると見込まれます。また、AIやドローンを活用した非破壊検査技術の導入が進んでおり、今後はスマートフォンで簡易チェックができるアプリなども登場する可能性があります。こうした技術の進化が、住宅診断の普及をさらに後押しするでしょう。
こうした動きは、単に中古住宅の価値を守るだけでなく、地方の空き家対策や再生プロジェクトにも直結します。中古住宅を「安心して買える資産」に変えることが、地域の住宅市場を持続的に成長させる鍵となるのです。
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