近年、都市部を中心に「ペアローン」を活用して住宅を購入する夫婦が増加しています。背景には、住宅価格の高騰という現実がありますが、この動きは地方に住む私たちにとっても無関係ではありません。
本記事では、ペアローンの仕組みや課題、そして地方社会に与える影響と今後の展望について、わかりやすく解説します。
都市部の住宅価格高騰とペアローンの拡大
東京などの都市部では、70㎡前後のマンションでも価格が1億円を超えることが珍しくなくなっています。
平均的なサラリーマンの年収ではとても手が届かず、単独で住宅ローンを組んでも借入限度に達してしまうケースが多いのが現実です。
そこで注目されているのが「ペアローン」という仕組みです。これは、夫婦それぞれが1本ずつ住宅ローンを契約することで、合算年収をもとに高額な融資を受けられる制度です。
ある調査では、2022年には約20%だったペアローンの利用率は、2025年には35%に達すると予測されています。
地方に住む私たちへの示唆とは?
一見すると都市部特有の現象のように見えますが、この流れは地方にも影響を及ぼしつつあります。
まず、都市部の高騰を受けて「地方へ移住して、より広く安価な住宅を購入する」という選択肢が注目されています。リモートワークの定着により、地価の安い地域で快適な暮らしを求める世帯が増加しています。
一方で、地方の中核都市でも人気エリアでは住宅価格が上昇傾向にあり、共働きでなければ住宅購入が難しいという声も聞かれるようになりました。そのため、ペアローンのニーズは今後、地方でも高まる可能性があります。
ペアローンのメリットとリスク
ペアローンには、夫婦の収入を最大限に活用できるという大きなメリットがあります。
例えば、住宅ローン控除を2人分受けられたり、それぞれが団体信用生命保険に加入できたりと、税制・保障の面でも有利です。
しかし、リスクも存在します。特に注意すべきは、離婚時のローン処理です。
ペアローンでは、夫婦それぞれが個別のローン契約を結んでいるため、離婚したからといって一方の債務を解消できるわけではありません。
1人の債務に変更するのは難しく、結果として離婚後も双方がローン返済義務を抱えるケースが多く見られます。
また、任意売却をしても、売却価格がローン残高を下回る「オーバーローン」に陥るリスクがあります。
これは地方において特に深刻で、新築から数年経過しただけで資産価値が大きく下がるケースが多く、売却しても借金だけが残る可能性があるのです。
※こうした契約や財産分与に関する判断は複雑なため、最終的な判断は、必ず専門家の指示を仰いでください。
今後予想される流れと地方の対応
今後、住宅価格の高騰が地方にも波及すれば、ペアローンの利用は一層拡大するでしょう。しかし同時に、住宅ローン破綻のリスクも高まると予想されます。
このような背景を踏まえると、住宅を購入する際には以下のような準備が重要です:
- 収入の将来性を踏まえたライフプランニング
- 住宅価格と将来的な資産価値の見極め
- 離婚・転職・病気など、ライフイベントのリスク想定
金融機関や地方自治体も、ペアローンに関する正確な情報提供やリスク説明の強化が求められます。
また、地方では空き家や中古住宅の活用を促進することで、初期費用を抑えた無理のない住宅取得を実現しやすくなります。こうした政策支援や情報提供が、より現実的な住宅購入につながるはずです。
地方で住宅を購入するあなたへ―実用的な視点
地方でペアローンを検討する場合は、次のようなポイントも意識しましょう。
- 将来的に売却可能な立地かどうか
- 住宅価格がローン残高を下回らないか
- 夫婦のどちらかに収入変化があった場合の返済余力
特に、離婚やライフプランの変更が発生した場合でも無理なく対応できるよう、事前に備えることが重要です。
そのためには、不動産会社や住宅ローンの専門家とよく相談し、自分たちに合った選択を行いましょう。
まとめ
都市部で広がるペアローンの利用は、地方の住宅市場やライフスタイルにも影響を与えつつあります。
共働き世帯の増加や住宅価格の上昇といった背景を受け、地方でもペアローンを活用する家庭が増える可能性は高いでしょう。
一方で、ペアローンには離婚時の共有名義・債務問題、オーバーローンなどのリスクも存在します。特に地方では、不動産の資産価値が下落しやすく、慎重な検討が必要です。
将来のライフイベントも見据えたうえで、無理のない住宅購入計画を立てること。
そして、必要に応じて専門家に相談することが、失敗しない住宅購入の第一歩です。
