「親が認知症になってしまったら、実家の売却はどうすればいいんだろう」と、漠然とした不安を感じていませんか?
実は、日本にはそういった状況を支える「成年後見制度」という仕組みがあります。ただ、この制度がなかなか使いにくい、というのが長年の課題でした。
2026年4月、政府は民法の改正案を閣議決定し、国会に提出しました。改正案が成立すれば、2028年度中にも新しいルールのもとで制度が動き始める見通しです。
この記事では、成年後見制度の概要と現状の問題点、そして今回の制度改正が不動産の売却にどんな影響をもたらすのか、わかりやすくお伝えします。
そもそも「成年後見制度」って何?
成年後見制度とは、認知症や知的障害などによって判断能力が十分でなくなった方のために、「後見人」と呼ばれるサポート役が本人に代わって、契約や財産の管理を行える制度です。2000年にスタートし、親族のほか弁護士や司法書士などの専門家が後見人を務めています。
不動産の売却においても、この制度は重要な役割を持っています。なぜなら、認知症などで判断能力がないと判断された方が当事者となる売買契約は、法律上「無効」になってしまうからです。後見人を立てることで、はじめて売却の手続きを進められるようになります。
2024年12月時点での制度の利用者は、全国でおよそ25万人にとどまっています。潜在的なニーズに比べて少ない、というのが実情です。
なぜ使いにくかったのか? 課題を整理します
成年後見制度には、長らく「使い勝手が悪い」という声がありました。その主な理由が、一度始めたら原則として終われないという仕組みです。
現行の制度では、判断能力が回復するか、本人が亡くなるまで制度を終了できません。たとえば「実家を売るためだけに使いたい」と思っても、後見人が選任された後は、財産管理のすべてに関与し続ける必要があります。専門家が後見人になった場合は、毎月2〜6万円程度の報酬が発生し続けることもあり、金銭的な負担がかさむことから、最初から「使わない選択」をする家族も少なくありませんでした。
また、後見人の権限が広すぎる点も課題でした。不動産の売却や遺産分割など特定の手続きだけをサポートしてほしいのに、本人のすべての財産管理を包括的に任せなければならない仕組みになっていたのです。
法改正で何が変わるの?
今回の民法改正案では、こうした課題に正面から向き合う内容が盛り込まれています。
まず大きなポイントは、制度の途中終了が認められるようになること。家庭裁判所が認めれば利用を途中でやめられる規定が新設されます。家族からの終了申し立ても可能になり、「売却が終わったら制度も終われる」という選択肢が生まれます。
次に、必要な手続きに限定したサポートができるようになります。たとえば「不動産の売却」や「遺産の分割」といった、特定の行為だけを支援してもらえる仕組みが設けられます。これまでのように、望んでいないことまで後見人の対象になる、という問題が解消される見通しです。
そして、これまで「後見」「保佐」「補助」と3段階に分かれていた制度の類型が、「補助」の一つに一本化されます。柔軟に本人のニーズに合った支援が選べるようになる、というのが今回の改正の大きな方向性です。
また、今回の改正案にはデジタル遺言書の導入も盛り込まれており、パソコンなどで作成した遺言書が法的に有効になる予定です(法務局での保管と、内容の口述による意思確認が必要となります)。
地域の不動産市場への影響を考える
現在、全国の空き家は過去最多の約900万戸(2023年時点)に達しており、増加の一途をたどっています。高齢者が施設に入居したり、亡くなったりすることで自宅が空き家になるケースが多く、特に人口が少ない地域ほどこの傾向が顕著です。
大都市圏から離れた地域では、買い手となる若い世代の人口がもともと少ない上に、空き家が増えることで不動産の需給バランスが崩れやすくなります。人口減が進む地域の不動産は、今後さらに価値が下がるリスクがあるとも言われています。
そんな中で、成年後見制度の使いやすさが改善されることには、大きな意味があります。「制度が使いにくいから」「費用がかかり続けるから」という理由で売却をあきらめていた家族が動きやすくなれば、これまで凍りついていた不動産の流動性が少しずつ改善される可能性があります。
65歳以上の一人暮らし世帯は、2023年時点で855万世帯にのぼり、全世帯の約16%を占めています。身寄りのない高齢者の財産をどう守り、どう活用するか、という問いは今後ますます切実なものになっていきます。
「売却を考える」なら、早めに動くのが鉄則です
親が元気なうちに、不動産の扱いについて家族で話し合っておくことが、何より大切です。判断能力があるうちであれば、本人の意思を反映した対策(任意後見制度の活用や家族信託の検討など)をとることができます。
一方、すでに判断能力が低下している場合でも、今回の法改正によって手続きの選択肢が広がる見込みです。改正法の施行は2028年度中が目標とされていますが、まずは現在の制度のもとで専門家に相談することが第一歩になります。
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※本記事の内容は、2026年4月時点の情報をもとに作成しています。法律・制度の詳細については専門家へのご確認をおすすめします。
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